1分で読める労務管理のポイント

配置転換をするときのポイント   ( 2011.10.06 )

最近、「労働者が配置転換を拒否するのですが、どうしたらいいですか」という相談が増えてきました。労働者には、配置転換を拒否する権利はあるのでしょうか。また、配置転換(人事異動)の際、気を付けるべきポイントには、どのようなものがあるのでしょうか。

企業は、昔から人事政策の観点から、定期的に配置転換を行って、組織を活性化させてきました。また、営業担当者と取引先の不正取引を防止する点からも、人事異動は必要な施策だと思います。

 

➣業務命令による配置転換は可能か
通常、就業規則に、配置転換や転勤に関する規定が設けられていると思います。就業規則に記載があれば、原則、個別同意の必要はありません。トラブル回避のためには、入社時に誓約書を取っておくとよいでしょう。また、正当な理由がなく配置転換を拒むことができないと就業規則に明記しておく必要があります。

 

➣労働者の家庭生活の不利益への配慮は
育児介護休業法第26条に「労働者の配置に関する配慮事項」があります。これは、子供の養育や親等の介護をする労働者には、就業場所の変更に配慮しなければいけないという条文になります。この26条制定後は、配置転換を無効とする裁判例も出てきました。【明治図書出版事件 東京地決 平14.12.27
特に、養育中や介護中の労働者に転勤(単身赴任)を伴う配置転換は、十分配慮する必要がありますが、通勤時間の延長(片道1時間程度の通勤)による就業場所の変更は、労働者側で努力すべき問題として、有効と判断されています。
しかし、このような労働者に対しては、他に配置転換できる社員はいないか等、その人選は、慎重に検討してくべきだと考えます。

 

➣勤務場所の特定者の配置転換は可能か
採用時に、勤務場所を特定している労働者を転勤させる場合は、たとえ、就業規則に転勤の規定があっても、労働者の同意を取る必要があります。しかし、勤務場所の特定が、求人票などに書かれている募集時の勤務場所の記載のみでは認められず、これは、さしあたっての就業場所を示しているにすぎず、勤務場所の明示がされたものではないとされる裁判例があります。【ブックローン事件 神戸地判 平2.5.25
勤務場所の特定者と労働者に誤解を与えないためには、面接時に、求人票の就業場所は、当面の就業場所だとしっかりと伝え、労働条件通知書にも当面の就業場所であると記載しておく必要があります。

執筆者:社会保険労務士 福井研吾

部下をマネジメントする能力

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