1分で読める労務管理のポイント

労働保険の年度更新①   ( 2012.06.04 )

総務担当者から、「労働保険の年度更新では、労働者の賃金総額に労働保険料率を乗じて計算すると思うのですが、その労働者というのは、具体的には誰が該当するのですか」と質問をいただきました。

 

例えば、社長の奥様は労働者でしょうか。日雇いで雇った社員は、労働者でしょうか。どこまでが自社の労働者になるのでしょうか。労災保険と雇用保険では、考え方に違いはあるのでしょうか。

 

労働保険対象者の範囲(例示)

区分

労災保険

雇用保険

基本的な考え方

常用、日雇、パート、アルバイト、派遣等、名称や雇用形態にかかわらず、労働の対償として賃金を受けるすべての者が対象となります。

また、海外派遣者により特別加入の承認を得ている労働者は別個に申告することとなるので、その期間は対象となりません。

雇用される労働者は、常用、パート、アルバイト、派遣等、名称や雇用形態にかかわらず、次のいずれかにも該当する場合には、原則として被保険者になります。
①1週間の所定労働時間が20時間以上であること
②31日以上の雇用見込みがあること

ただし、次に掲げる労働者は除かれます。
①季節的に雇用される者であって、次のいずれかに該当するもの

・4か月以内の期間を定めて雇用される者

・1週間の所定労働時間が30時間未満である者
②昼間の学生
③65歳以上で新たに雇用される者

法人の役員(取締役)の取扱い

代表権・業務執行権を有する役員は、労災保険の対象となりません。

①法人の取締役・理事・無限責任社員等の地位にある者であっても、法令・定款等の規定に基づいて業務執行権を有すると認められる者以外の者で、事実上業務執行権を有する取締役・理事・代表社員等の指揮監督を受けて労働に従事し、その対償として賃金を得ている者は、原則として、「労働者」として取り扱います。
②法令、又は定款の規定により、業務執行権を有しないと認められる取締役等であっても、取締役会規則その他内部規則によって、業務執行権を有する者と認められる者は、「労働者」として取り扱いません。

③監査役、及び監事は、法令上使用人を兼ねる事を得ないものとされていますが、事実上一般の労働者と同様に賃金を得て労働に従事している場合は、「労働者」として取り扱います。

 

※保険料の対象となる賃金は、「役員報酬」の部分は含まれず、労働者としての「賃金」部分のみです。

株式会社の取締役は原則として被保険者となりません。

ただし、取締役であって、同時に部長、支店長、工場長等の従業員としての身分を有する者は、服務態様、賃金、報酬等の面からみて労働者的性格の強いものであって、雇用関係があると認められる者に限り「被保険者」となります。この場合、公共職業安定所へ雇用の実態を確認できる書類等の提出が必要となります。

①代表取締役は被保険者になりません。

②監査役は原則として被保険者になりません。

また、株式会社以外の役員等についての取扱いは以下のとおりです。

○合名会社、合資会社、合同会社の社員は株式会社の取締役と同様に取り扱い、原則として被保険者となりません。

○有限会社の取締役のうち、会社を代表する取締役は被保険者になりません。

○農業協同組合等の役員は、雇用関係が明らかでない限り被保険者とはなりません。

○その他法人、又は法人格のない社団もしくは財団の役員は、雇用関係が明らかでないかぎり被保険者とはなりません。

 

※保険料の対象となる賃金は、「役員報酬」の部分は含まれず、労働者としての「賃金」部分のみです。

事業主と同居している親族

同居の親族は、原則として対象者とはなりません。ただし、同居の親族であっても、常時同居の親族以外の労働者を使用する事業において、一般事務、又は現場作業等に従事し、かつ次の条件を満たすものについては、一般に私生活面での相互協力関係とは別に独立して労働関係が成立していると見て、対象者となります。具田的な判断については、以下の要件を満たしているか否かとなります。

①業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。

②就労の実態が当該事業場における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。特に、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等、また賃金の決定、計算及び支払方法、賃金の締切り及び支払の時期等について就業規則その他これに準ずるものに定めるところにより、その管理が他の労働者と同様になされていること。

原則として被保険者となりません。

ただし、次の条件を満たしていれば被保険者となりますが、公共職業安定所へ雇用の実態を確認できる書類等の提出が必要となります。

①業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。

②就労の実態が当該事業場における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。特に、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等、また賃金の決定、計算及び支払方法、賃金の締切、及び支払の時期等について就業規則その他これに準ずるものに定めるところにより、その管理が他の労働者と同様になされていること。

③事業主と利益が一にする地位(役員等)にないこと。

出向労働者

出向労働者が出向先事業組織に組入れられ、出向先事業主の指揮監督を受けて労働に従事する場合は、出向元で支払われている賃金も出向先で支払われている賃金に含めて計算し出向先で対象労働者として適用してください。

出向元と出向先の2つの雇用関係を有する出向労働者は、同時に2つ以上の雇用関係にある労働者に該当するので、その者が生計を維持するのに必要な主たる賃金を受けている方の雇用関係についてのみ被保険者となります。

派遣労働者

派遣元・・・原則としてすべての労働者を対象労働者として適用してください。

派遣先・・・原則として手続の必要はありません。

派遣元・・・次の要件をすべて満たしていれば被保険者として含めます。

①1週間の所定労働時間が20時間以上であること
②31日以上の雇用見込みがあること

派遣先・・・原則として手続の必要はありません。

日雇労働者

すべて対象者となります。

労働者の申請により、申請者に対して日雇労働被保険者手帳が交付されます。この手帳を保持している者を雇用する場合、事業主は印紙保険料の納付(手帳への貼付)が必要となります。

【出典:平成24年度 労働保険 年度更新 申告書の書き方を一部修正】

執筆者:社会保険労務士 福井研吾

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