離職率の低い会社は、様々な施策に取り組んでいます。また、離職率の低い会社は、この不況下でも、会社の業績が良いのも特徴です。
ここでは、その取組事例を紹介していきたいと思います。
離職率がもっとも高いのは、10代、20代です。つまり、若手社員の離職率を下げることが、その会社の定着率を上げるポイントになります。

一般的に離職率の低い会社は、会社と社員の信頼関係がしっかりと構築できています。では、具体的にどのようなに信頼関係を築いているのでしょうか。

➢採用面接で自社のすべてを話す
辞めた社員から、「仕事のイメージが違う」「ここでは、自分がやりたいことができない」などと聞くことがあります。どのような業界でも、外から見るのと、中に入って実際に仕事をしてみるのとでは、少なからずギャップがあるものです。このギャップを埋めることが、雇用のミスマッチを避けることにつながります。

自社の長所と短所、仕事の厳しさと楽しさをしっかりと伝える。可能であるならば、1年程度先輩の社員に、入社1年目の話をしてもらうのもよいと思います。賃金も、30代ならいくらぐらい貰えるか、40代はいくらか。課長になったらいくらか、など、自分の将来設計を描きやすくしている会社もあります。たしかに、厳しい話をするので、入社希望者が減少したとの報告もありましたが、その代わり、一度入社したら、ほとんどの社員はその会社を辞めていません。採用には、時間もコストもかかります。育成にもです。たとえ、一時的に採用希望者が減っても、長期的に見れば、こちらの方が強い会社を作れるのは間違いありません。

➢給与明細書に社長からの手紙を入れる
人は何に感動するのか。信頼関係というのは、小手先のテクニックではないことが、この会社からは伺うことができます。一人ひとりに社長からの心のこもった手紙が入っていたら、感動しないわけがありません。社長は忙しい中、社員一人ひとりをしっかりと観察し、今の心理状態を把握し、特に褒め、特にアドバイスをする。結局信頼関係というものは、どれだけ相手のことを考えてあげられているのかだと思います。もちろん、このような会社に労務トラブルなんて、起こりようもありません。ただし、全員に同じ言葉を書くぐらいなら、やらない方がいいですよ。

➢一度決めたことは継続する
「うちの会社は朝令暮改」などとおっしゃる社長に時々お会いするのですが、そのような会社に定着率を聞くと、やはり悪いですね。当然と言えば当然です。なぜなら、一度何かを決めても、社長の鶴の一声で、撤回されるかと思うと、本腰を入れて、取り組むはずがありません。いつも、冷やかにその状況を見ていることになると思います。

会社との関係のみならず、人間関係において信頼関係を構築するための基本は、“嘘をつかない”“一度決めたことは最後までやる”だと思います。上記の「給与明細書に社長からの手紙を入れる」も、一度やると決めたら、どれだけ忙しくてもやることが大切です。

売上を上げるためには自社のファンを作らなければいけない、というのは、よく聞く話ですが、まず、社員が自社のファンにならないような会社から、お客様ははたして、モノを買って下さるのでしょうか。

当たり前のことを当たり前にする。信頼関係が構築できている会社は、実にやっていることはシンプルです。継続こそが最も大切だと知っているのです。

「離職率が低い会社が取り組んでいる事例集④」については、こちら

「離職率が低い会社が取り組んでいる事例集③」については、こちら

「離職率が低い会社が取り組んでいる事例集①」については、こちら

執筆者：社会保険労務士 福井研吾